制御工学における基礎知識学習システム


LQR

可制御なシステムであれば極配置法を用いることにより、閉ループ系の極を任意に変えることができます。たとえば閉ループ系の応答を速めたい場合には、複素左半平面にある極をより左側へ配置することで解決します。しかしそれに伴い必要とする制御入力が過大になるなどの問題が生じることになります。つまり制御性能と制御入力の両方を考慮して設計を行うことが必要となります。さらにどのような極の配置が望ましいか明らかでない場合、極配置法を用いることは有効とはいえません。そこである制御規範を基に制御器を設計することを考えます。

ここでは評価関数を設けて、それを最小とするように状態フィードバックによる最適制御入力を決定する設計方法について記します。

まず次のように可制御で線形な時不変システムを考えます。

上式のもとで、評価関数を最小となるような状態フィードバックとなる必要があります。そこで次のような2次形式の評価関数を考えます。

ここで制御目的の重み行列Qは非負定な対象行列、制御入力の重み行列Rは正定対象行列です。

さらに上記の関数において終端時間を無限遠にした場合、

となります。そしてこの評価関数で求められる値Jが最小になるとき、性的制御入力が次のようになります。

ただし

です。ここでPはリカッチ型代数方程式

の正定対数行列です。つまり上記の代数方程式を解くことによって状態フィーバック行列が決まります。

重み行列の設定指針としてはQを大きくとれば制御性能が増し、Rを大きくとれば制御入力を小さくできることになります。

このように評価関数に2次形式を用いて線形な状態フィードバックを導き、状態を原点に戻す閉ループ系を構成する制御系を線形2次形式レギュレータ(LQR)と呼びます。

参考文献
野波健蔵 平田光男「MATLABによる制御系設計」東京電機大学出版局(1998)